確信から葛藤へ ユーミンのAI観
人の心を動かせるのは人だけ――。シンガー・ソングライターの松任谷由実さん(72)は昨年秋、そう断言していた。当時、アルバム 「Wormhole /Yumi Aral」を完成させたばかり。人工知能(AI)で自身の若い頃によく似た声を合成し、楽曲を歌わせた話題作だ。一方で、作詞作曲の営みに関しては人間のほうが優位だと強調していた。それから1年足らず。当時の確信が大きく揺らいでいるという。葛藤を語った。
崩れた人間の牙城でも出会えた歌声
「はい。ここ1年ほど、話題の『テクノロジカル・リパ
「せっかく出会ったから。 今回使った歌声合成の技術も、最初に紹介された時は
それがある時からある程度歌えるようになって、ある程戯歌えるところの範囲で曲を書いていたのかもしれません。―――無意識のうちに歌唱に縛られていて、AIの活用よって解放された、と。
「そうですね」
―自身の歌声にはいつから自信や誇りを持てるように?
「それが今回のツアーからなんです。AIの方が奇麗には歌えるかもしれませんが、 そこに感情を乗せるためにボイストレーニングを重ねたからだと思います」
「肉体的な経年劣化はどうしてもある。肉体は必ず滅びていくものなので。そこに新しいテクノロジーが入る余白が出てくるのかと思うと、復雑な気持ちもあります」
「AIとの共生によって、 自分とは何か、人間とは何かということを考えさせられ続けるのだと思います」
(聞き手・野城千穂)
松任谷由実さんのホールツアー「THE WORMHOLE TOUR」から=田中聖太郎氏撮影